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口中調味 |
味のないごはんを口の中で、おかずの味で味付けしながら食べていくという独特の食べ方です。たとえば、ごはんとお刺身を一口食べたあと、ごはんと野菜の煮物の一口に切りかえ、その次にごはんと漬物を合わせて味わい、さらにお味噌汁を飲みます。このような食べ方は、味付けしていないごはんの食べ方としては当たり前にみられるものです。 いま、ごはんと肉・野菜の炒め物を食事として、若者とお年寄りが食べるとしましょう。その食事を口中調味で食べていきますと、お年寄りは二膳のごはんを少々の炒め肉と食べ合わせながらすますことができます。つまり、肉・野菜炒めは高脂肪食でも、ごはんと口中調味していけば、お年寄りに合った脂肪の摂り方で食事をする事が可能になります。 一方、若者は同じくごはんを二膳食べても、炒め肉をたっぷり食べながら口中調味していきますから、若者むけの脂肪をたくさん摂る栄養バランスで食事をすることができます。 ところが、味付けしないごはんを料理と口中調味することをやめて、たとえば、肉や野菜などをすべて合わせてピラフにしてしまうというような現代風の食べ方はなにをもたらすでしょうか。 この食べ方は大きな皿に料理を入れて若者とお年寄りが向き合うような現代風な食べ方です。しかし、若者はたくさん、お年寄りは少な目にというような栄養総量のみを年齢によって替えることができるだけです。つまり、若者もお年寄りも栄養バランスを調節して食べる事はできません。 口中調味という食べ方は、栄養バランスを、食べる人が自由自在にコントロールできるという優れた食べ方なのです。また、口中調味という食べ方は、味わいの面で高い文化性をもっていると同時に、ごはん食の健康性の基盤になっているといえます。 (『ごはん食』鈴木正成) |
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