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うなぎ料理はなんといっても「蒲焼き」だが、これは酒の肴になりずらい。
「蒲焼き」の濃く甘いタレはご飯との相性が第一で、粉山椒でアクセントをつけた「蒲焼き」とご飯が出合う、「鰻重」「鰻丼」ほど「おいしいものはない」と熱狂的な支持を集めている。
相性の基本として、濃い味付けの料理には、「純米酒」のような濃醇な酒を合わせる。確かに「鯛のアラ焚き」とぬる燗の「純米酒」は相性が良い。
しかし、タレのかかった「蒲焼き」には合わせにくい。
実際、大阪「柴藤」「いずもや」や東京の「竹葉亭」など、うなぎの銘店で、「蒲焼き」を肴に酒を飲んでいる客はめったに見かけることはない。
鰻で酒を飲む人にとって酒の肴は、まず「キモ焼き」。続いて「肝の佃煮」、次に「うざく」に移る。その後、わさびを効かせた「白焼き」にいくか、または「八幡巻き」や「う卷き」へと進む。
十分飲んだ後の仕上げは、「鰻丼」と「肝吸い」の定番メニューとなる。
また最近の専門店では、マグロ・ハマチなどの刺身から、ゼザートまである「会席コース」なるものをメニューに加えた店もあり、「うなぎ会席」で飲む客も多い。
「蒲焼き」は鰻の最も代表的なメニューだが、その濃く甘いタレは焼き鳥のタレ以上に日本酒、特に燗酒には合いずらい。
焼き鳥は「タレ」より「塩味」が日本酒に良く合うように、「うなぎ」でも「蒲焼き」よりは「白焼き」が良く合う。わさびが添えてあれば、言うことはない。
うなぎ屋の酒は「純米酒」「本醸造」そして東京では「樽酒」もはずせない。
「純米のひや」でやるなら、「肝焼き」と「うざく」また「白焼き」も注文したいものだ。「本醸造の燗酒」なら「白焼き」もよいが、「う卷き」もなかなかの相性だ。
「ひやの樽酒」や「よく冷えた樽酒」なら「蒲焼き」もなんとかこなせるだろう。「樽酒」の持つ、口中を洗う働きと清涼感、香味、喉越しの力強さは「蒲焼き」に負けないだろうから。
洋食に「よく冷えた生貯蔵」も合う。それは一口に飲む量を増やした低アルコールのお酒で口中を洗って、味の新鮮さを取り戻すためだが、「蒲焼き」の場合、「よく冷えた生貯蔵」はそれほど相性がよくない。その理由の一つは「蒲焼き」が温かいという理由による。「熱い食べ物」でなく「温かい食べ物」だから。
料理が熱ければ、口中を冷やすために、冷酒もよいが、温かい料理には本来温かい酒が合う。
大阪で「うなぎ」といえば、忘れてはいけないものに「ハン助」がある。
大阪の「蒲焼き」は東京と、蒸しや開き方の違いの他に頭を付けて焼く、ということが特徴だが、その「蒲焼きの頭」を「ハン助」と呼ぶ。
まったくの家庭料理だが、その「ハン助」と木綿豆腐(時には青ネギも入れる)を焚いたもので飲む燗酒はこたえられない。けっして「うなぎの頭」を食べるわけでなく、豆腐を食べるのだが…。
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